フェムケアとは?効果や今日からできるおすすめの方法も解説

フェムケアとは?効果や今日からできるおすすめの方法も解説

最終更新日:
2025-12-03
公開日:
2025-12-03

フェムケアは、単なるトレンドワードではなく、女性の心身に起こるさまざまな変化を科学的な知見をもとにサポートするセルフケアのひとつです。

とくにデリケートゾーンのにおいやかゆみ、性交痛、尿漏れといった悩みは、日常生活に密接に関わるものだと言えます。

この記事では、フェムケアの意味や歴史、臨床試験に基づいた効果、そして今日からできる5つの実践方法について解説します。

フェムケアとは?フェムテックとの違い

フェムケアと似た言葉に「フェムテック」があります。しかし、両者は意味が異なります。

まずフェムケアとは、女性の体にまつわる悩みや変化に寄り添うセルフケア習慣のことを指します。たとえば、デリケートゾーンの洗浄や保湿、骨盤底筋のトレーニングといった“自分の手でできる行動”です。

一方フェムテックは「フェミニン(女性)+テクノロジー」の造語で、月経管理アプリや妊活サポートデバイス、更年期症状の可視化ツールなど、女性特有の健康課題を解決するためのテクノロジー製品やサービスのことを指します。

つまり、フェムケアが「行動」、フェムテックが「道具」ということです。違いはあるものの、どちらも共通の目的を持っています。女性が人生のあらゆるフェーズで自分の体と向き合い、より快適に、前向きに生きるための大切な観点です。

たとえば閉経に伴って起きる乾燥や性交痛といった症状は、これまでタブー視されやすかったものでした。しかし現在はフェムケアによる予防や対策、フェムテックによる可視化が進み、クオリティ・オブ・ライフを高めるアプローチとして社会的にも受け入れられはじめています。

フェムケアの歴史

フェムケアという言葉が一般化したのはごく最近のことですが、「女性の体をケアする」という発想は古代にも見られます。古代エジプトでは月経時の処置として、タンポンのようなものが使われていたという記録が残っています。また、文化や宗教によっては月経を否定的に捉える場合もあれば、神聖なものとして扱う民族もいました。

日本では明治維新以降、女性への衛生教育が重要視され、月経や妊娠に関する正しい知識が広がりました。学校教育でも月経教育が導入され、タンポンや布ナプキンが市場に登場し始めたのもこの時期です。

現在では、女性の健康課題は「個人の問題」ではなく「社会全体の課題」として認識されるようになりました。日本でも「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の考え方が広がり、女性の健康支援を推進しています。女性の社会進出が進んだことで、働く女性の健康課題が可視化されたことも、フェムケアという言葉が広がっている背景にあります。

フェムケアがもたらす3つの効果

フェムケアは「なんとなく体に良さそう」という印象を持たれがちですが、実際には医学的研究で効果が確認されているものもあります。ここでは代表的な3つの効果を紹介します。

1.ニオイ・かゆみの改善

外陰部は汗腺や皮脂腺が多く、蒸れや雑菌繁殖によって不快なにおいやかゆみが起きやすい部位です。腟のpH(3.8〜4.5)を正常に保つことで、においの原因となる成分の発生を抑え、肌の刺激が起こる頻度が少なくなるという研究報告があります1)

注意したいのは、香りの強いボディソープ=清潔ではないという点です。洗浄力が強すぎると肌のバリア機能を損なう場合もあるため、フェムケアでは“やさしく守る”ことが大切です。

2. 乾燥・性交痛の軽減

更年期になると女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、腟の粘膜が乾燥しやすくなります。これが性交時の痛みの原因になることもあります。ヒアルロン酸などの保湿成分を含むジェルを12週間使用することで、うるおいがアップし、痛みが軽減したとする研究もあります2)。腟の保湿ケアはアメリカ泌尿器学会でも推奨されている方法です。

3. 尿漏れ症状の軽減

妊娠・出産・加齢などで骨盤底筋が弱くなると尿漏れが起きやすくなります。11の医学研究を分析した結果、骨盤底筋トレーニングを行うことで、産後3か月および6か月の女性の尿漏れの回数が改善したことが報告されています3)

最近では専用アプリやデバイスなど、続けやすいフェムテック製品も増えています。

今日からできるフェムケアの5つの方法

フェムケアは、一部の人だけが特別に行うものではなく、誰でも今日からはじめられる習慣です。なかでも科学的に効果が認められているのが、「洗う・うるおす・鍛える・やわらげる・菌バランスを守る」という5つのアプローチです。それぞれの目的と方法を見ていきましょう。

1.弱酸性ソープで洗浄する

デリケートゾーンの肌は薄く繊細で外的刺激に弱いのが特徴です。全身と同じボディソープや石鹸を使うと、アルカリ性のものが多く、外陰部の自然な弱酸性バランスを壊してしまうことがあります。

乳酸菌を含むフェミニンソープを使った研究では、4週間の継続使用でかゆみ・臭気スコアが有意に低下し、細菌性腟炎(BV)の再発率も下がったという報告があります5)。フェムケアにおける洗浄は、「落とす」より「守る」を重視したケアを心がけましょう。

2.ヒアルロン酸ジェルでうるおす

年齢とともに女性ホルモンが減少すると、腟粘膜のうるおいが失われ、乾燥やヒリつき、性交時の痛みが目立つようになります。ヒアルロン酸は水分を抱え込む性質を持ち、腟ジェルとして使うことで粘膜の乾燥を和らげます。

閉経後の女性を対象とした研究では、12週間の継続使用で乾燥や性交痛が軽減し、エストロゲンクリームと同等の効果が得られたと報告されています6)。「ホルモン治療には抵抗がある」という方にも取り入れやすい方法です。

3.骨盤底筋トレで鍛える

骨盤底筋は子宮や膀胱、直腸などの臓器を支える重要な筋肉です。出産や加齢、運動不足によって筋肉がゆるむと、尿漏れや骨盤臓器脱などの症状の原因になります。

日本泌尿器学会の基幹教育施設378施設のうち、365施設(97%)が失禁治療を導入しており、骨盤底筋トレーニングの指導は335施設(88%)で行われています。指導者としては看護師が多い傾向があります7)

女性が快適に過ごすためにも、骨盤底筋のケアは生活の質の向上につながります。

4.乳酸菌ケアでバランスを守る

腟内には多種多様な菌が共生していますが、主役となるのがラクトバチルス属の乳酸菌です。これらは腟内を弱酸性に保ち、悪玉菌や病原菌の増殖を防いでいます。

ストレス・加齢・洗いすぎ・抗生物質の使用などによって菌バランスが崩れると、細菌性腟炎やかゆみ、乾燥といったトラブルが起こりやすくなります。

こうした背景から、乳酸菌入りソープやジェル、サプリメント、腟用カプセルなど、外側と内側からの“菌ケア”が注目されています。閉経後の女性で菌バランスの改善や泌尿器機能症状の軽減が期待できるとする報告もあります。

妊娠中の方におすすめのフェムケア

妊娠中に方におすすめのフェムケアとして、会陰マッサージでやわらげることがおすすめです。

会陰部(腟と肛門の間)は筋肉が集まる部位で、緊張しやすく、こわばりがあると排泄や性行為時の不快感につながることがあります。妊娠後期になると出産時の裂傷リスクが高まることから、会陰マッサージが推奨されるケースもあります。

入浴後など体が温まったときに、オイルやジェルを使って会陰部をやさしくマッサージします。妊娠34〜36週の初産婦で会陰マッサージを継続した研究では、していない場合に比べて会陰切開による損傷が軽症となる確率が高かったと報告されています8)

フェムケアに関するよくある質問

フェムケアについて特によく聞かれる3つの質問についてお答えします。

Q. 腟ケアで閉経後の生活は変わる?

閉経後の女性に多く見られるGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)は、性交痛や尿漏れなどの症状を引き起こし、生活の質を低下させる要因になります。しかし適切な腟ケアを行うことで、これらの症状が軽減される可能性があります。ある研究では、GSMの症状軽減によって女性のクオリティ・オブ・ライフが向上したと報告されています。

Q. フェムケアに効果があるサプリは?

サプリメントには科学的な裏付けがしっかりしているものと、そうでないものがあります。

たとえばエクオールは大豆イソフラボンから体内で生成される成分で、更年期症状のひとつであるホットフラッシュを軽減するという研究結果が示されています。

また、乳酸菌には腟内環境のバランスを整える働きがあり、ビタミンDは不足すると骨盤底筋の機能低下に関連するといわれています。

Q. フェムケアにおすすめのオイルは?

粘膜に直接触れるオイルは、安全性が第一です。特に陰部の皮膚は薬剤の吸収率が高いため、刺激が少ないものを選ぶのがおすすめです。自分に合うオイルは人によって異なるため、違和感があればすぐに使用を中止しましょう。

自分に合ったフェムケアを取り入れてみて

フェムケアは、誰か特別な人のためではなく、自分の体と向き合うために続けられてきたケアです。科学的知見とともに発展してきた取り組みでもあります。外陰部のケア、腟のうるおい、筋肉のトレーニング、菌のバランスは、どれもクオリティ・オブ・ライフを高めるために大切な要素であり、効果は数々の研究で確認されています。

とくに更年期以降の悩みは「年齢のせい」と片づけられがちですが、それは誤解です。腟ケアによって痛みが和らぎ、尿漏れが減り、自信を取り戻したという声は少なくありません。つまりフェムケアは、人生後半の「あきらめ」を「選択肢」に変えてくれるものでもあるのです。

まずは、今の自分に合ったステップをひとつ取り入れてみてください。膣の洗浄でも、保湿でも、骨盤底筋トレーニングでも構いません。「自分のためにできることがある」と気づくだけで、暮らしが少し明るく変わるかもしれません。

参考文献

  1. Zhao J, Leung JYY, Lin SL, Schooling CM. Cigarette smoking and testosterone levels in men and women: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Prev Med. 2022;154:106891. doi:10.1016/j.ypmed.2021.106891
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8618584/

  1. Kingsberg SA, Simon JA, Krychman ML, et al. A randomized, pilot trial comparing vaginal estradiol tablet and vaginal moisturizer for moderate to severe postmenopausal vulvovaginal symptoms. Menopause. 2024;31(9):1003-1011. doi:10.1097/GME.0000000000002385
    https://journals.lww.com/menopausejournal/fulltext/2024/09000/a_randomized%2C_pilot_trial_comparing_vaginal.4.aspx

  1. Fukui S, Okada Y, Ito Y, et al. Usefulness of a 24-hour urine collection test for evaluating male infertility. Int Urol Nephrol. 2025;57(2):273–281. doi:10.1007/s11255-025-04640-w
    https://link.springer.com/article/10.1007/s11255-025-04640-w

  1. 日本新薬株式会社. エルタシン®錠 製品情報パンフレット. 日本新薬株式会社; 2023.
    https://www.sdcns.co.jp/library/product/dx/pamphlet_eltr.pdf

  1. Ramos-Ibeas P, Fernández-González R, Pericuesta E, et al. Impact of moderate alcohol consumption on male fertility hormones and semen quality: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2022;17(6):e0270242. doi:10.1371/journal.pone.0270242
    https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0270242

  1. Wang Y, Chen L, Zhang H, et al. Association between dietary intake of vitamins and sperm quality: a systematic review and meta-analysis. Theriogenology. 2025;215:62-74. doi:10.1016/j.theriogenology.2025.02.072
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378512225000726

  1. 西島壮, 高橋将記, 出村慎一. レジスタンス運動が血中テストステロン濃度に及ぼす影響. 日本体力医学会誌. 2022;71(3):255-263. doi:10.7600/jspfsm.71.255
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/71/3/71_255/_pdf

  1. 金子和弘, 金久博昭, 浜岡隆文, 他. 男子の加齢に伴う内分泌機能および身体的特性の変化. 日本アスレティックトレーニング学会誌. 2010;25(4):22-28. doi:10.20693/jans1981.25.4_22
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jans1981/25/4/25_22/_pdf

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