生理(月経)痛がつらくて夜に眠れない。そんな経験をしたことがある方は多いでしょう。下腹部の鈍痛や腰の重さ、さらにはイライラや不安感などで眠れず、睡眠不足になってしまう人も少なくありません。本記事では、生理痛で眠れないときに考えられる原因と、少しでも快適に眠るための対策、受診の目安を解説します。
生理痛で寝れなくなる痛みの原因とは?
生理の期間は、下腹部痛や腰痛、頭痛や下痢などの体調の変化が現れます。痛みの原因は主に、プロスタグランジンの過剰産生、子宮周辺の血流低下、ホルモンバランスの影響が考えられます。原因を詳しく見ていきましょう。
プロスタグランジンの過剰産生
生理痛が強まる原因のひとつは、プロスタグランジンの過剰産生です。プロスタグランジンは痛みを引き起こす物質で、血管の収縮や胃腸にも影響を与えることがあります。
生理は子宮内膜がはがれおちて、子宮を収縮させ、経血となって現れる現象です。この際に子宮内膜でプロスタグランジンが過剰になると、子宮の収縮が強くなり、下腹部痛が強くなります。さらに、腰痛や頭痛も引き起こします。経血の出口(子宮頸部)が狭いことも痛みを強くする要因と考えられています1)。とくに生理初日から2日目にかけて痛みが強くなりやすい傾向です。10〜20代の方に多く見られます。
子宮周辺の血流低下
生理前は、骨盤の周囲の血流が悪くなります。血流が悪くなると、生理痛が強まる人も少なくありません。先行研究では、夜間に子宮動脈の血流が低下し、痛みを感じる方が増加することが示唆されています2)。
一方で、軽い生理痛の方では、子宮動脈血流にほとんど差がなかったとする報告もあり3)、眠れないほどの生理痛はさまざまな要因が関係すると考えられます。
ホルモンバランスの変化
生理周期は、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の変動で調整されています。生理前にはこれらのホルモンが急激に低下するため、体調や気分のゆらぎにつながりやすいです。
エストロゲンが低下すると、血管や神経の働きに影響を与えます。また、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と呼ばれる神経伝達物質に影響を及ぼし、生理時の片頭痛の一因になると考えられています。
生理痛で寝れないときにすぐできる対策
眠れないほどの生理痛が続くと、つらいだけでなくストレスにつながることもあります。ちょっとした工夫を取り入れるだけでも、改善につながるケースは少なくありません。簡単に実践できる方法を紹介します。
寝る前に体を温める
体が冷えると血管が収縮して血流が悪くなり、痛みが強まることがあります。お風呂でしっかり温まるとよいでしょう。
ぬるめのお湯にゆっくり浸かると自律神経のバランスが整いやすくなり、心身がリラックスします。また、湯たんぽや電気毛布、レッグウォーマーや腹巻きを併用するのもおすすめです。
楽な体勢で横になる
生理痛が強いときは、無理に眠ろうとせず、体が楽な姿勢で横になることが大切です。横向きで膝を少し抱える「シムス位」と呼ばれる体勢は、お腹の緊張を和らげ、腰の負担も軽減してくれます。
また、クッションや抱き枕を使って体を支えるのもおすすめ。自分にとってリラックスできる体勢を見つけてみてください。
カフェインを控える
カフェインは、神経を鎮める「アデノシン」の作用を阻害し、神経を興奮させる働きがあります。4)眠気を覚ます働きがあるため、眠りを浅くする可能性があります。生理中は、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどの摂取を控えましょう。
また、意外とチョコレートや緑茶にもカフェインは含まれています。生理中はカモミールティーやルイボスティーなどカフェインレスの飲み物を選ぶとよいでしょう。寝る前のホットミルクは、イライラした気分を落ち着かせ、安眠をもたらす効果が期待できます。
市販の痛み止めを服用する
生理痛には、市販の鎮痛薬を活用するのもひとつの方法です。服用をためらう方もいますが、正しく使用すれば、痛みやつらさを和らげる効果が期待できます。ポイントは痛みを感じ始めたときに服用することです。我慢しすぎると、痛み物質が増え、薬が効きにくくなる可能性があります。
鎮痛薬を服用するときは、空腹時を避け、用法・用量を守りましょう。効かないからといって、すぐに追加して服用しないようにしてください。服用間隔は、おおむね6時間程度あけることが望ましいですが、製品によって異なります。添付文書やパッケージの記載内容を確認して使用しましょう。
もし、数回服用しても症状がよくならない場合は、服用を中止し、医師や薬剤師に相談することが推奨されます。授乳中の場合は医師に相談しましょう。
生理痛で受診を検討すべきケース
生理痛は多くの女性が経験する症状ですが、毎回強い痛みで眠れなくなるほどの痛みがある場合は要注意です。子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている場合もあり、放置すると悪化する恐れがあります。生理痛で受診を検討すべきケースを紹介します。
痛みが強すぎて眠れない
生理のたびに強い痛みで夜眠れない状況が続く場合は要注意です。睡眠を妨げるレベルの痛みは病気が関係していることもあります。
場合によっては治療が必要になることもあるので、生理痛があまりにもひどい場合は、我慢せずに婦人科を受診しましょう。
鎮痛薬を服用しても痛みが治まらない
市販の鎮痛薬を服用しても痛みが治まらない、効果が短時間で切れてしまうといった状態は、医療機関を受診すべきサインです。
薬が効かないほどの生理痛は、ホルモンバランス以外の要因や、慢性的な病気が隠れている可能性があります。症状を放置してしまうと、悪化する恐れもあるため、早めに受診することが大切です。
また、もともと頭痛持ちで、日常的に鎮痛薬を服用する方は、使用に注意が必要です。長期的な服用は、慢性的な頭痛を招く可能性があります。5)1か月で15日以上頭痛があり、日常的に鎮痛薬を服用している方は、早めに医療機関を受診して相談するようにしてください。
日常生活に支障がある
学校や仕事に行けないほど痛みが強い、家事や育児ができないといったケースも医師の診察が必要です。睡眠不足や強い痛みが長期間続けば、体力や気力を奪い、生活の質も下げてしまいます。
生理痛がひどく日常生活に支障をきたしている場合は我慢せず、婦人科を受診して原因を確認してもらいましょう。
寝れないほどの生理痛に関するよくある質問
眠れないほどの生理痛に関するよくある質問にお答えします。生理痛で眠れず悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
Q. 生理で夜眠れないのはなぜ?
生理中に眠れなくなるのは、プロスタグランジンの過剰分泌によって引き起こされる痛みが原因です。子宮が収縮して、下腹部がズキズキしたり、ギューッとしたりする痛みを生じます。腰痛や頭痛を伴う場合もあり、複数の症状が重なることで睡眠が浅くなり、寝つきにくくなります。
体の冷えや緊張も痛みを強くさせてしまうため、寝る前に体を温め、リラックスするとよいでしょう。
Q. 寝不足だと生理痛はひどくなりますか?
寝不足は生理痛を悪化させる原因のひとつです。睡眠が不足すると自律神経やホルモンバランスが乱れ、痛みを感じやすくなります。
学生を対象にしたある研究では、月経症状がある人はない人に比べて睡眠時間が短い傾向にあると報告されています6)。また同研究では、生理不順の人で「卵・肉・魚・野菜・牛乳の摂取が有意に少なく、睡眠状況においては眠れないと感じている学生が有意に多かった」としています。
日ごろから睡眠を適切にとり、栄養バランスのよい食事を心がけることが大切です。
生理痛で眠れない原因を知って対策しましょう
生理痛で眠れない原因には、プロスタグランジンや子宮周辺の血流低下、ホルモンの影響などが関係しています。眠れないときは体を温めたり、リラックスできる寝姿勢や環境を工夫したりしましょう。必要に応じて鎮痛薬を活用することも大切です。
痛みは我慢せず、自分に合った対策をとり、生理の期間を少しでも快適に過ごせるようにしましょう。
参考文献
1)一般社団法人日本女性心身医学会. 月経困難症(月経痛).一般のみなさまへ. 日本女性心身医学会 Webサイト.
https://www.jspog.com/general/details_67.html
2)Celik H, Gurates B, Parmaksiz C, et al. Severity of pain and circadian changes in uterine artery blood flow in primary dysmenorrhea. Arch Gynecol Obstet. 2009;280(4):589-592.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19219445/
3)Ozbay K, Semiz A. Assessment of Uterine Blood Flow in Mild Primary Dysmenorrhea. J Pain Res. 2024;17:2071-2077.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11182353/
4)農林水産省 農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象外の気概要因についての情報(有害化学物質). 「 カフェインの過剰摂取について」. 農林水産省Webサイト.
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
5)永田 栄一郎. 一次性頭痛:薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛,MOH)―典型例、その診断と治療. 日本内科学会雑誌. 2023;112(8):1371-1376.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/8/112_1371/_pdf/-char/ja
6)湯淺 洋子;小林 洋子;新堀 多賀子;初鹿 静江;明渡 陽子. 月経症状に及ぼす生活関連因子の検討. 人間生活文化研究. 2013;23:282-286
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hcs/2013/23/2013_282/_pdf/-char/ja





