妊娠線とは?できやすい人の特徴や予防法を徹底解説

妊娠線とは?できやすい人の特徴や予防法を徹底解説

最終更新日:
2025-11-21
公開日:
2025-08-26

妊娠中期に差し掛かるころ、お腹が少しずつふくらんできた自分の体を見て、「このまま妊娠線ができて跡が残ったりしないだろうか…」と不安になる方は多いかもしれません。特に初めての妊娠では、「妊娠線」と聞いたことはあるけれど、実際にどんなものなのか、どう対処すればよいのか分からず戸惑うこともあるでしょう。

妊娠線は誰にでも起こり得るものです。けれど、「避けられない」と思い込んでしまうのは、もったいないことでもあります。なぜなら、妊娠線には原因があり、理解したうえでケアをすれば、発生リスクを抑えることができるとされているからです。ただし、肌質や体質などの遺伝的要因も関係するため、適切なケアを行っても完全に予防できない場合もあることは理解しておきましょう。それでも、できる範囲でのケアを心がけることで、妊娠線を軽減できる可能性は十分にあります。

この記事では、妊娠線ができるメカニズムから予防・ケアの具体策までを、わかりやすく整理してご紹介します。

妊娠線とは?

妊娠線は、妊娠に伴い腹部・乳房・臀部・太ももなど急激に伸びる部位に現れる赤紫色の線状痕です。医学的には「線状皮膚萎縮症」や「ストレッチマーク」とも呼ばれます。主に妊娠24週以降から目立ち始めることが多く、妊婦のおよそ半数以上が経験するとも報告されています。

妊娠期に皮膚が急速に伸びることで、真皮内のコラーゲンやエラスチン線維(※)が部分的に切れたり薄くなったりする“微細な断裂”が生じます。

(※)コラーゲンは肌のハリ、エラスチンはエラスチン:肌の「伸縮性」や「弾力」を支える繊維状タンパク質

その部位が線状の痕として表面から透けて見える現象が妊娠線です。表皮(肌の表面)自体は破けないものの薄くなり、初期は赤紫色に見えます。時間とともに銀白色へと変化しますが、完全に消えることは稀です。

妊娠中に急激にお腹が大きくなると、表皮はなんとか伸びても、真皮(表皮のさらに下)の伸びには限界があり、結果として線維が切れてしまうのです。そのため、できるだけ早い段階での予防が勧められています。

見た目の変化に戸惑うかもしれませんが、それは体が新しい命に対応しようとする自然な証。だからこそ、自分の体を大切にいたわる視点で、この変化と向き合っていきたいものです。

妊娠線ができる4つの原因

妊娠線は、単なる「皮膚の伸び」だけで起こるものではありません。実は、いくつかの要因が重なり合うことで発生リスクが高まります。ここでは、主に影響するとされる4つの原因を解説します。

皮膚の急激な伸びによる真皮の軽微な断裂

妊娠中、とくに妊娠20〜28週(5〜7か月頃)からお腹は一気に大きくなります。このスピードに表皮はある程度ついて行けても、深いところにある真皮は限界をこえると、コラーゲンやエラスチンの線維がところどころ細かく切れてしまいます。

こうした“真皮の細かなキズ”が、のちに赤紫の線(妊娠線)として肌表面から透けて見えることが、妊娠線ができる最も直接的な仕組みです。

ホルモンバランスの変化が与える影響</h3>

妊娠中は、胎盤から出るホルモンの影響でコルチゾールというステロイドホルモンがいつもより高い状態が続きます。
コルチゾールが増えると

  1. 肌のハリを生み出す線維芽細胞の働きが低下する
  2. コラーゲンやエラスチンの生成量量が減り、既存の繊維も壊れやすくなる

その結果、皮膚の「ゴムの伸びる力」が弱まり、お腹が急に大きくなるスピードについていけず、妊娠線ができやすい状態になります。

さらに、エストロゲンやリラキシンなど妊娠中に増える別のホルモンも、真皮の繊維の配置を乱したり、傷んだ皮膚を直すスピードを遅らせたりすることがわかっています。

コラーゲン・エラスチンの減少

肌の“バネ”役であるコラーゲンとエラスチンは、妊娠中はホルモンの影響で作られる量がグッと減ります。さらに、すでにある線維もほぐれて弱くなりやすい状態に。

その結果、皮膚はゴムが古くなったように伸びにくくなり、お腹が急に大きくなるスピードに追いつけず、真皮で細かな切れ目(ミクロのキズ)が入りやすくなります。これが妊娠線ができる大きな理由の一つです。

体重増加のペースとの関係

体重の増え方が早すぎると皮膚への引っぱりが急に強くなり、妊娠線ができやすくなることが研究で分かっています。米国医学研究所(IOM)のガイドラインでは、妊娠13週以降の体重増加ペースを次のように示しています。

妊娠前のBMI値 週あたりの体重増加ベース 月あたりの体重増加ベース
18.5–24.9(ふつう体型) 0.35〜0.50kg/週 約1.4〜2.0kg/月
BMI25–29.9(やや太め) 0.23〜0.33kg/週 約0.9〜1.3kg/月
BMI30以上(肥満) 0.17〜0.27kg/週 約0.7〜1.1kg/月

これらの目安を大きく上回るスピードで体重が増えると、妊娠線の発生率や重症度が高くなることが報告されています。

したがって、自分のBMIに合わせたIOM推奨上限を超えないことを目安に管理するのが理想的です。

妊娠線ができやすい人の5つの特徴

ここでは、一般的に言われている妊娠線が出来やすい人の特徴を5つ紹介します。

妊娠線は、妊婦の約半数以上に生じると報告されていますが、発症しない妊婦さんも確かにいます。

  • 遺伝素因や年齢
  • 体格(妊娠前BMI)と妊娠中の体重増加量
  • 多胎妊娠や胎児が大きい場合

など、複数のリスク因子の重なりが原因となるとも言われています。あくまでも個人差があるということを理解した上で「早めにできる範囲のケア(体重管理・肌の保湿など)を取り入れる」ことが現実的な対策になります。

体重の増加が急激な人

「体重が急激に増えると妊娠線ができやすい」というのは、複数の研究で裏づけられています。急な体重の増加が続くと、皮膚の伸びるスピードが限界を超え、真皮に細かな切れ目が入りやすくなります。

体重増加を緩やかなペースに抑えるには、食事量・間食・運動習慣を見直すことが大切です。月2kgを超えるペースが何週も続くようなら、助産師や医師に相談して体重コントロールの具体策を立てると安心です。

双子や三つ子を妊娠している人

多胎妊娠ではお腹のふくらみが単胎より早く・大きく進むため、皮膚が受ける伸展ストレスも増えます。2015年の研究では、双胎妊娠の妊婦で妊娠線が出現した割合が79%、一方で妊娠線がない群は21%と報告され、単胎より高率であることが示唆されました。

根拠はまだ限られるものの、多胎妊娠は「妊娠線ができやすい状況」の一つと考えられます。保湿ケアに加えて、

  • サポート下着やマタニティベルトで腹部をやさしく支える
  • 体重増加ペースをガイドライン内に抑える
  • 医師や助産師と相談しながら早めにケアを始める

といった対策が、皮膚への急激な引っ張りを和らげる助けになります。

若年妊娠の人

複数の研究では、10〜20代の妊婦さんのほうが30代より妊娠線ができやすい傾向が報告されています。年齢が高いほどコラーゲン量はゆるやかに減るものの、妊娠線の発症に関しては「若年=リスク高」が現時点の主流データです。

したがって、年齢に関係なく体重増加ペースの管理や早めのスキンケアを行うことが、リスクを抑える基本になります。

家族に妊娠線経験者がいる場合

「母親や姉妹にも妊娠線があった」
このような家族歴(近い親族にも同じ症状があった事実)があると、妊娠線のリスクが高まります。


複数の観察研究で家族歴がある妊婦の妊娠線発症率が約2〜3倍に跳ね上がることが示されています。結論としても「遺伝的素因は主要リスク」と繰り返し言及されました。

コラーゲンやエラスチン線維の強度・配列は遺伝の影響を受けるため、同じ体重増加でも“切れやすさ”に個人差が出ると考えられます。家族歴がある場合は、推奨範囲内の体重増加を守ることに加え、早めの保湿や腹帯・マタニティベルトで腹部を支えるなど、多方向からのケアを意識すると安心です。

皮膚が乾燥している人

「肌が乾燥している=妊娠線ができやすい」という説はよく耳にしますが、乾燥肌そのものが妊娠線を増やすという確かなデータはありません。

それでも保湿には、肌をやわらかく保ち「肌が柔らかいほうが伸展ストレスによる不快感を和らげる」という実用的なメリットがあります。

かゆみやつっぱり感を軽減し、妊娠期を快適に過ごす助けにもなるため、保湿は“妊娠線を確実に防ぐ方法”ではなく快適に過ごすためのセルフケアとして、早めから取り入れるとよいでしょう。

妊娠線の予防はいつからやるべき?

妊娠線の予防は早ければ早いほど良いとされています。

多くの産科医は、胎盤が完成しホルモン変動が本格化する妊娠12〜16週ごろ(4〜5か月前後)から保湿ケアを習慣にするよう勧めています。

ただし、海外の論文「Cochraneレビュー」によると「どの外用剤をいつから使えば確実に妊娠線を防げるか」という強い証拠はまだありません。

だからこそ“できる前”からのケア+体重管理や腹帯の併用が、今取れる現実的な対策になります。毎日の保湿は数分で済むシンプルな習慣。今から始めることで、もし妊娠線ができても目立ちにくく抑えられる可能性があります。

妊娠線の予防方法

妊娠線を“確実に”防げる特効策は、現時点では医学的に確立していません。

Cochraneレビューでは、クリームやオイルなど外用剤について「予防効果を裏づける高品質エビデンスは見当たらない」と結論づけられています。

ガイドラインでは、たとえば妊娠後期(安定期以降)で、体重増加を週0.35〜0.50kg(1.4〜2kg/月)以内にとどめるよう推奨されています。

したがって、現実的な予防は

  1. ガイドライン内で体重をゆるやかに増やすことを軸に、
  2. 保湿を毎日続けて皮膚をやわらかく保ち不快感を軽減させ、
  3. 適度な運動や栄養バランスで肌づくりを内側から支える

という“続けやすい習慣”を早めに取り入れることです。

「完璧に防ぐ」より「リスクを少しでも下げて快適に過ごす」という視点でケアを続けましょう。

妊娠線ができてしまったときの対処法

「気をつけていたのに、妊娠線ができた…」

そんな瞬間は、誰に起こってもおかしくないです。

妊娠線は真皮が傷ついてできるため、完全に消すのは難しいものの、“薄く・目立ちにくく”する余地は十分あると分かっています。ここでは産後のセルフケアと、必要に応じた医療ケアの両面から、現実的な対策をまとめました。

産後すぐのセルフケア

できたばかりの妊娠線は、皮膚がまだ修復モードにある“活発期”。この数か月が「薄くなるか、残りやすいか」の分かれ目です。

下記の表に具体的なセルフケア方法をまとめました。

保湿+軽いマッサージ

入浴後や就寝前にクリーム/オイルを塗り、手のひらでやさしく円を描く程度のマッサージを。血流が促され、線の幅や色味が和らぎやすくなります。

冷えを避ける

冷えは血行を妨げ、回復を遅らせる原因の一つ。お腹やヒップを冷やさないよう意識しましょう。

“1日1回”でも続ける

産後は忙しくても、たとえ1日1回でも続けることが大切。続けた人ほど、数か月後の色あせ方に差が出やすいと言われます。

ただし、これらのセルフケアは「肌を柔らかく保ち不快感を減らす」ことが主目的で、確実な治療効果の裏づけはまだ不足している点は理解しておきましょう。

美容皮膚科での治療

セルフケアだけで改善が難しい場合は、美容皮膚科での相談も選択肢の一つです。レーザー治療やフラクショナルRF(高周波)など、妊娠線に特化した施術が存在します。費用や効果に差があるため、信頼できる医療機関で事前に説明を受けることが大切です。

治療法 期待できる変化
フラクショナルCO₂/エルビウムレーザー 真皮コラーゲン再構築による凹凸・色調の改善
非侵襲RF(高周波)・マイクロニードルRF 皮膚のハリ改善、線維密度↑
マイクロニードリング 肌質全体の滑らかさ向上
トレチノイン0.1%外用(授乳終了後のみ) striaerubra(初期段階に見られる赤紫色の痕跡)の色調改善・幅縮小

まとめ

妊娠線は、あなたが新しい命を育んだ証。その存在を否定的に捉え過ぎず、まずは“自分の物語の一部”として受け止めることが大切です。

見た目の変化に不安を覚えたときは、パートナーや家族に率直に気持ちを伝えることも効果的。言葉にして共有するだけで心の負担が軽くなり、サポートしてくれる相手の温かい反応が助けになります。

それでも気になる場合は、助産師や皮膚科医など専門家へ相談してみましょう。医学的な情報を整理し、今後のケア方針を一緒に考えてもらうことで、不安が具体的な行動プランへ変わり、心も落ち着きやすくなります。妊娠線は決してあなたの価値を損なうものではありません。身体と同じくらい、心にもやさしく寄り添うケアを続けていきましょう。

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