妊娠中に寿司を食べて後悔する3つの理由|食べられるネタも解説

妊娠中に寿司を食べて後悔する3つの理由|食べられるネタも解説

最終更新日:
2025-11-26
公開日:
2025-11-26

妊娠中にお寿司を食べてしまい、赤ちゃんに何か影響があったらどうしようと不安を抱えている人もいるかもしれません。

確かに、妊娠中の食べ物には注意すべき点がいくつもあります。しかし、多くの場合、一度食べたくらいでは深刻な影響を及ぼすことはありません。

この記事では、妊娠中に寿司を食べて後悔する理由、避けるべき寿司ネタと食べられる寿司ネタ、体調に異変があった場合の対処法について解説します。

不安をやわらげ、妊娠中の食事選びに自信が持てるよう、正しい知識を手に入れましょう。

妊娠中に寿司を食べて後悔……でもほとんどの場合は心配なし

妊娠中にお寿司を食べてしまい、赤ちゃんへの影響を心配し、後悔する方は少なくありません。確かに、生魚を原因とした食中毒や水銀、ビタミンAの過剰摂取には注意が必要です。ただし、これらのリスクが高まるのは日常的に大量摂取した場合に限ります。

一度だけの摂取で赤ちゃんに重大な影響が出ることは、ほとんどありません。食事の際は、摂取量に気をつけるようにしましょう。

ただし、食中毒菌の種類によっては、摂取量に関わらず感染リスクが生じることもあります。発熱や気分が悪くなるなど、体調に変化がみられた場合は、すぐに医療機関を受診してください。不安なときは、医師や保健師などに相談し、正しい知識を得ることで安心につながります。

妊娠中に寿司を食べて後悔する3つの理由

お寿司に限らず、生魚や大型魚、内臓を含む魚介類全般には、妊娠中に注意が必要な成分やリスクが含まれています。これらは魚介類全体に共通する注意点として、知っておくことが大切です

ここでは、妊娠中に寿司を食べて後悔する理由を3つ紹介します。

1.食中毒の危険性がある

妊娠中にお寿司を食べる際、注意すべきリスクのひとつが食中毒です。妊娠中は免疫が低下しているため、通常より食中毒にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。

厚生労働省の「リステリアによる食中毒」によると、加熱が不十分な魚介類(とくに生食されるもの)の摂取は避けるよう注意喚起されています。

リステリア菌は冷蔵保存中でも増殖するため、注意が必要です。妊娠中に感染すると、重い感染症を引き起こし、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも感染する恐れがあります。

魚介類だけでなく、非加熱のナチュラルチーズや、生ハムやスモークサーモンなどの加工肉なども感染源となるため、注意が必要です。

またノロウイルスは、カキや貝類、生のイカなどから感染することがあります。感染すると、激しい嘔吐や下痢、脱水によって体力が低下し、間接的に妊娠経過に影響を及ぼす可能性があるため、感染には注意が必要です。

妊娠中は、加熱された寿司ネタを選ぶ、衛生管理がきちんとした店舗で購入するなど、工夫することが大切です。

2.水銀の摂取リスクがある

妊娠中にお寿司を食べて後悔する理由として「水銀を摂りすぎてしまったのでは?」という不安もあるかもしれません。

水銀は、金目鯛やマグロ類など、一部の大型の魚に多く含まれています。こうした魚の摂取量に気をつけることが大切です。

妊婦が高濃度のメチル水銀を継続的に摂取すると、お腹の赤ちゃんの脳や神経の発達に悪影響を与える可能性があるとされています。

水銀は体内に蓄積される性質があるため、継続的な過剰摂取は避けましょう。厚生労働省では、妊婦が1週間に摂取しても良い量を定めています1)

3.栄養バランスの偏りやビタミンA過剰摂取の可能性がある

妊娠中は、赤ちゃんの発育に必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。特定の食品ばかり摂取すると、栄養が偏りやすくなります。

ビタミンAは、赤ちゃんの成長にも関わる重要なビタミンです。しかし、厚生労働省の注意喚起によると、ビタミンAの過剰摂取により、赤ちゃんの先天性障害が増加することが報告されています。

妊婦のビタミンA耐容上限量は、2,700μgRAE/日(レチノール:動物性ビタミンAの場合)ですが、推奨摂取量は年齢によって異なります2)。一度多めに摂取しただけで深刻な影響が出ることはまれですが、妊娠初期は過剰摂取にならないよう意識しましょう。

日常的に過不足なく、バランスよく栄養を摂ることが大切です。

<ビタミンAの推奨摂取量>

年齢 推奨量 耐容上限量
18〜29歳 650(730)μgRAE/日 2700μgRAE/日
30〜49歳 700(780)μgRAE/日 2700μgRAE/日

※()内は妊娠後期の推奨量

妊娠中に注意すべき寿司ネタ

妊娠中でも、お寿司を楽しみたいと考える方は多いでしょう。ただし、ネタによってはお母さんや赤ちゃんへの影響が懸念されるものもあるため、正しい知識をもとに選ぶことが大切です。

なお、寿司ネタに関する注意点の多くは、魚全般にも共通するリスクです。こうした知識を持っておくと安心でしょう。

食中毒の危険性が考えられる寿司ネタ|生イカ・サバ・貝類など

生イカやサバ、カキなどの貝類は、アニサキスやノロウイルス、リステリア菌による食中毒のリスクが高いとされている寿司ネタです。

たとえば、アニサキスは魚介類に寄生する線虫で、激しい腹痛やアレルギー反応を引き起こすことがあります。

また、リステリア菌は、冷蔵庫内でも増殖する特徴があります。妊娠中に感染すると、胎盤を通じてお腹の赤ちゃんにも影響が及ぶ恐れがあるため、とくに注意してください。

食中毒予防のためにも、生食は避けて、十分に加熱されたネタを選ぶようにしましょう。

水銀を含む寿司ネタ|クロマグロ・メカジキ・キンメダイなど

クロマグロ、メカジキ、キンメダイなどの大型の魚は、他の魚介類と比べてメチル水銀濃度が高い場合があります。

厚生労働省の「妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項」では、これらの魚について、刺身1人前(約80g)を週1回までに控えるよう推奨されています。目安としては、以下のとおりです1)

<水銀の推奨摂取量>

キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロ 1週間に80g程度
キダイ、マカジキ、ミナミマグロ 1週間に160g程度

複数のネタを食べたい場合は、それぞれの量を半分〜3分の1程度に調整するとよいでしょう。水銀は胎盤を通じてお腹の赤ちゃんに影響を与える可能性がありますが、平均的な摂取量であれば、過度に心配する必要はありません。

魚にはDHAや良質なタンパク質など、妊娠中に必要な栄養素も豊富に含まれています。リスクを理解したうえで、うまく付き合いましょう。

ビタミンAを多く含む寿司ネタ|うなぎ・ホタルイカなど

妊娠初期は、ビタミンA(レチノール)の過剰摂取に注意が必要です。たとえば、うなぎやホタルイカ、レバーなどは、とくに含有量が多いとされています。

文部科学省の「食品成分データベース」によると、100gあたりの含有量(μgRAE)は以下のとおりです3)

  • うなぎ:約1,500~2,400μgRAE
  • ホタルイカ:約1,500~1,900μgRAE

一度食べたくらいでは過剰摂取になることはありません。習慣的に摂取するのは避けるとよいでしょう。

妊娠中でも後悔せずに食べられる寿司ネタ

妊娠中でも、安全に食べられる寿司ネタはあります。ひとつずつ見ていきましょう。

加熱済みの寿司ネタ|玉子焼き・蒸しエビ・ツナなど

妊娠中は免疫力が低下しているため、加熱済みの寿司ネタを選ぶことでリスクを減らすことができます。たとえば、以下のようなネタがおすすめです。

  • 玉子焼き
  • 蒸しエビ
  • ツナマヨ(加熱調理済のツナ缶使用)など

これらは食中毒菌や寄生虫のリスクが低く、妊娠中でも比較的安心して選びやすいネタです。

厚生労働省「妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項」によれば、ツナ缶(缶詰に使われる魚)は通常の摂取量では問題ないとされています。

ただし、回転寿司などでは、加熱済みと明記されていない場合もあります。メニュー表で確認したり、心配な場合はスタッフにたずねたりして、確認することをおすすめします。

野菜や発酵食品の巻物|かっぱ巻き・納豆巻きなど

かっぱ巻きや納豆巻きなどの植物性・発酵食品を使った巻物は、食中毒リスクが低く、妊娠中にも安心して楽しめる寿司ネタです。

納豆には、植物性たんぱく質やビタミンK、食物繊維などが豊富に含まれています。妊娠中の便秘予防や栄養補給にも効果的とされています。

また、野菜を使用した巻物はビタミンやミネラルが摂取でき、栄養バランスを整えるのにも役立ちます。

ただし、これらは冷たい状態で提供されるため、加熱による殺菌がされていないこともあります。食中毒などのリスクを避けるためにも、衛生管理がきちんとしたお店で、調理や保存の状態に配慮して選ぶと安心です。

妊娠中に寿司を食べた場合の対処法

妊娠中にお寿司を食べてしまって、どうしても不安になる方もいるかもしれません。ここでは、万が一のときの対処法についてわかりやすく解説します。

体調に異変がなければ様子を見る

妊娠中に寿司を食べても体調に変化がなければ、過度に心配する必要はありません。食中毒の潜伏期間は、以下のように原因となる菌やウイルスにより異なります。

  • ノロウイルス:24~48時間(ホタテ・など)4)
  • アニサキス:8時間(サバ・イカ・サンマなど)5)
  • リステリア菌:24~72時間(冷蔵保存された寿司全般)6)
  • ヒスタミン:食後すぐ~数時間以内(マグロ・カツオなど)7)

ヒスタミン食中毒や軽いノロウイルス感染などの場合、多くは自然に回復します。ただし、症状が重くなったり、アレルギー症状が出たりすることもあるため、注意が必要です。

食後に体調が少しでもおかしいと感じたり、胃腸の症状が続いたりするときは、医療機関に相談することをおすすめします。

受診すべきサインを知る|発熱・腹痛・下痢など

一般的な食中毒の症状として、以下のようなものが挙げられます。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 下痢
  • 発熱

とくに、リステリア感染は妊娠中に重い症状になる可能性があります。症状が見られたら、速やかに医療機関を受診してください。

不安が強い場合は専門家に相談する

体調に異変がなくても、不安が強い場合は、医師や保健師などに相談することが大切です。妊娠中は心理的ストレスがお腹の赤ちゃんに影響を与える可能性があります。早めに専門家へ相談して、不安を解消することをおすすめします。

地域の保健所や医療機関でも相談を受け付けている場合があるので、気軽に相談してみるとよいでしょう。

「妊娠中に寿司を食べてしまった」という後悔がストレスになることも

「妊娠中にお寿司(生魚)を食べてしまった……」という後悔がストレスになるのは、珍しくありません。

実際に、妊娠中に働いている人を対象とした日本の研究では、自分の理想と異なる行動をしてしまったり、赤ちゃんに危険を与えたかもしれないと感じたりしたことで、罪悪感を抱く人が多いと報告されています。これは妊娠中特有の心理状態であり、母親としての責任感の表れでもあります。

実際に大きな問題がなくても、小さなことで「母親として失格かもしれない」と自分を責めてしまう傾向も見られます。こうした罪悪感がストレスになることもあるのです。

必要以上に思い詰めず、不安なときは専門家に相談することが大切です。

妊娠中の寿司に関するよくある質問

ここでは、妊娠中のお寿司に関してよく寄せられる質問に回答しました。

Q. 妊娠中にお寿司以外で避けるべき食べ物はありますか?

厚生労働省では、ナチュラルチーズや生ハム、スモークサーモン、生肉など加熱せずに製造される食品や、加熱が不十分な魚介類の摂取を避けるよう注意喚起しています。

これらの食品に含まれるリステリア菌は、これらの食品に含まれるリステリア菌は、冷蔵庫の中でも増殖する特徴があります。特に、長期間保存できるものは菌が増殖しやすいため、妊娠中は避けることが大切です。

Q.妊娠中の寿司はいつからダメなのですか?

妊娠中のお寿司の摂取は、いつからNGという明確な決まりはありません。

ただし、妊娠初期(妊娠12週頃まで)はお腹の赤ちゃんの臓器がつくられる大切な時期です。この時期は特に慎重に過ごすことを心がけましょう。

生魚は食中毒のリスクがあるため、妊娠が判明した時点から加熱されたネタを選ぶと安心できます。

正しい情報を確認し、不安なときは専門家に相談しよう

妊娠中に寿司を食べて後悔している方も、まずは落ち着いて正しい情報を確認しましょう。

確かに、リステリア菌やノロウイルス、水銀やビタミンAの摂取は、注意が必要です。

しかし、ほとんどの場合、これらのリスクが高まるのは継続的な摂取や、保存状態の悪い食品を食べた場合に限ります。加熱済みのネタや野菜、発酵食品などを選べば、妊娠中でもお寿司を楽しむことができます。

万が一、体調に変化を感じたら医師に相談してください。不安が強いときには保健師や助産師に相談しましょう。

自分を責めすぎず、正しい知識を身につけて、前向きに食生活と向き合うことが大切です。

参考文献

  1. 厚生労働省. 魚介類等に含まれる水銀のリスク評価について. 厚生労働省; 2005.
    https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf
  1. 厚生労働省. 妊産婦のための食生活指針(「妊産婦のための食生活指針」策定検討会報告書). 厚生労働省; 2006.
    https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf
  1. 文部科学省. 日本食品標準成分表データベース(八訂). 文部科学省; 2023.
    https://fooddb.mext.go.jp/index.pl
  1. 東京都保健医療局. 魚介類等に含まれる水銀について. 東京都保健医療局; 2024.
    https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/chudoku/chudoku02
  1. 東京都保健医療局. ビタミンAのとり過ぎに注意しましょう. 東京都保健医療局; 2024.
    https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/chudoku/chudoku13
  1. 神奈川県衛生研究所. ビタミンAの過剰摂取に注意. 神奈川県衛生研究所; 2005.
    https://www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/050324_news109.html
  2. 東京都保健医療局. 妊婦や乳児への水銀の影響について. 東京都保健医療局; 2024.
    https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/anzen/anzen/food_faq/chudoku/chudoku15

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