産院選びも育児も。起きたことを受け入れ、「普通な」方を選ぶのがライフデザインのコツ(後編)

仕事と子どもを持つことを、どうバランスを取って人生をデザインしていくか。キャリアを重ねながら子どもを持った女性に、そのとき考えたこと、その経験を聞きます。今回は、2人の男の子を育てた加藤由紀子さんに、結婚、妊娠、産院選びをポジティブに行う方法、現在悩んでいる更年期の症状について聞きました。

産院選びも育児も。起きたことを受け入れ、「普通な」方を選ぶのがライフデザインのコツ(後編)

最終更新日:
2025-12-17
公開日:
2025-12-17

いつ産むか。どう育てるか。働くかどうか。

女性にとって、子どもを持つことは、「持つかどうか」というひとつの決断ではありません。この連載では、子どもを持つ女性に、妊娠・出産によりキャリア、人生、やりたいこと、パートナーとの関係について何が変化したのか、どう決断したのかを描きます。

vol.2に登場いただくのは、都内のIT企業で事務職のパートタイムとして働く加藤由紀子さん。前編では、山登りが大好きだった加藤さんが、子どもを持つまでのお話を聞きました。その背景にあったのは、特別なことを期待せず、ただ起きたことをポジティブに受け入れていく心の持ち方。後編では、2人の子育てと復職、そして現在立ち向かっている壁である更年期の症状についてお話を伺います。

タクシーが来ない!  陣痛の中、歩いて病院に向かった2人目の出産

──2人目の出産経験について教えてください。

2人目の出産では、予定日より2週間早く陣痛が来てしまい、出産予定の病院に行くタクシーがつかまらず、偶然家に来てくれていた母と歩いて病院まで行きました。時々陣痛が来て立ち止まっては「タクシーが通りかかったら乗ろうね」と言い合って歩くうちに、病院に着いてしまいました。「家の近くだから」と決めた病院でしたが、その近さに救われる結果になりました。

1人目を出産したばかりでしたから、心持ちは“ベテラン妊婦”という感じ。1人目の出産の時にお世話になった看護師の方がいて、心強い気持ちさえありました。2人目の出産後は、喜びに浸る間もなく、2人の子育てが始まりました。

──2人の子育てはどのような経験だったのでしょう。

下の子は新生児なので、ほとんど手がかからないんですよ。下の子はおんぶしたり寝かせたりして、上の子につきっきりでした。この時ちょうど上の子は「魔の2歳児」と言われる時期に差し掛かった頃。やりたいことがうまくいかず、ギャーッと声をあげることばかりでした。

今思うと、それまで自分につきっきりだったお母さんを取られてしまって「何がどうなってるんだ!」とストレスだったのでしょう。毎日大騒ぎする上の子と、生まれたばかりの下の子の育児にがむしゃらに向き合いました。

それでも、あんまり大変だったという記憶がないんですよね。パートナーも育児に積極的でしたし、私は仕事がないので時間に融通がきいて。この時は、育児中心の生活をしていたので仕事をすることを想像することもありませんでした。

復職のきっかけは“推し”。「いい話に乗っかっちゃおう!」と復職

──加藤さんはその後、それまでとは違う職場でパートタイムとして働き始めました。このきっかけは何でしたか?

上の子どもが小学生、下の子どもが幼稚園生になると、自分の時間ができるようになりました。同じ幼稚園に子どもを通わせている友人と集まってランチをする余裕も出てきて、働き始める方も多くなってきて。私自身には「何としても働きたい!」という気持ちはあまりなく、パートナーからも勧められることはありませんでしたが、大きな転機になったのは“推し”です。

この時ある歌手にハマっていて、友達とライブに出かけることが多くありました。ライブに行ったら、グッズのタオルやTシャツを思うままに買いたい。けれど、パートナーに子どもを見てもらいながら、夫が稼いできたお金で買い物をするのは気が引ける......。「自分のお小遣いくらい、自分で稼ぎたいな」と思っていた時に、タイミングよく友人に会社に誘われました。友人は以前からIT企業で事務をしていて、ちょうど人手が足りないからと私を誘ってくれたのです。「いい話に乗っかっちゃおう!」と、友人に誘われるまま、その会社に入社しました。

──加藤さんにとっては、久しぶりの仕事ですよね。復職の大変さはありましたか?

最初は何が何だかわからなくて、浦島太郎のような状態でした。働くこと自体も久しぶりなのに、ITの用語はちんぷんかんぷん。パソコンも仕事ではほとんど触ったことがなく、使い方を覚えるところから始めました。けれど、その大変さよりも、子どもなしで外出できることが楽しくてたまりませんでした。電車に乗るのも、オフィスで働くのも楽しくて。

2人の子育てと仕事の両立。会社は「お出かけ気分」で楽しくて仕方なかった

──子育てと仕事の両立はどんな風にしていましたか? たとえば、1日のスケジュールはどのようなものだったのでしょう。

朝は5時半に起きて、子どもたちのお弁当を作ります。30分くらいかけてお弁当を作ったら、自分の出勤の支度をして、7時くらいになったら子どもたちを起こします。上の子を見送った後、下の子を幼稚園に自転車で送っていきます。通っている幼稚園には朝30分早く預かってくれる制度があり、それを利用していました。その後その足で駅に向かって、出勤していました。

──かなりハードスケジュールですね。大変ではありませんでしたか?

外に出られるのが本当に楽しいと思っていたので、何も苦ではありませんでした。「新しい生活が始まったな」と思うくらいで。それまで、買い物に行くのも2人の子どもを引き連れて行かなければならなかったので、単独で動けることのありがたさが身にしみました。

──復職して最初のお給料が振り込まれた時は、どんな気持ちでしたか?

自分の名前の口座にお金が入っているのには、喜びがありましたよ。それまでは、ライブグッズだけでなく、服や化粧品も「そこまで良いものじゃなくても......」とどこか我慢していたのだと思います。仕事を始めると、電車に乗って、誰かに会って、社会に出る感覚がありました。それで湧き上がっていた「ちょっと素敵なメイクをしたいな」「きちんとした服を着たいな」という気持ちを自分のお金で叶えられるのがとても嬉しかったです。

初めて向き合った乗り越えられない壁。更年期の症状と働くこと

──その後、その会社で現在に至るまでパートタイムとして働いていらっしゃいます。最近では、新しい悩みがでてきたところだとか。

私の場合は、40歳を過ぎたあたりから、ちょっと生理の周期が変わったんです。それまで28日周期だったものが、だんだん26日くらいの周期になってきて。45歳を過ぎると、生理の後に茶色のおりものが続くようになり、会社の健康診断で相談したところ、医師の勧めで婦人科を受診しました。婦人科で血液検査をしてみると、女性ホルモンの数値が少ないとのこと。薬で改善できると説明されました。

考えてみれば、45歳を過ぎたあたりから、強いめまいに襲われたり、いきなり暑さを感じて汗をかくことが何度かありました。婦人科を受診したことで「ああ、更年期に差し掛かったんだ」と合点がいきました。

今はまだ症状が軽いのですが、これが重くなっていったらどうしようと、実はちょっと心配です。会社の同僚は私より年下の女性がほとんどで、このことをどう説明したらいいかもまだわからない。薬を飲み始めたことも、パートナーにもまだ話していないんです。だから今、初めての試練を迎えているのかもしれない。子どもに元気でいてもらうには私がまず元気でいなきゃと思うけど、正直に言うとちょっと怖いです。だけど、そんな時に私を勇気づけてくれるのもまた、子どもです。

私の子どもは、自分のやりたいことや目指すことが決まったら、それだけを見据えて頑張るタイプなんです。私だったらうまくいかなかった時のための保険をかけておこうと思うけれど、そんな考えは一切ない。私もそんな風に今の時期を乗り越えたいなと思っています。

──このインタビューを通して、加藤さんの自然で、ポジティブな意思決定とその結果の受け止め方に驚いたり、学んだりさせていただきました。その秘訣は、何なのでしょうか。

私にとってはこれが普通で、その普通の生活をただしてきただけなんですよ。強いて言うなら......体力にかなり自信があるかもしれません。ずっとスポーツをやってきて、子育てをしながらも子どもとするキャッチボールに夢中になったり、ボクシングをしたりと体を動かすことをやめませんでした。おかげで男の子2人の子育てを辛いと思うこともなく、ここまで来られました。マインドセットを変えるよりも、もしかしたら体力をつけることが子育ての色々なことを解決してくれるのかもしれません。あくまで、私の体験談ですが、もし悩んでいる方がいるなら、そういう人もいるんだなと参考にしてもらえたらいいなって思います。

取材・文/ 出川 光

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