同じように悩んでいる方は少なくありません。厚生労働省の報告によると、不妊治療と仕事を両立している人は全体の約5割。その中にも「なんとか続けている」という方も多くいます1)。
「治療を優先するか、仕事を優先するか」。後悔のない選択をしたいと思っても、簡単には決められません。ここでは、仕事を続けながら治療と向き合う方法と、仕事を辞めて治療に専念する場合の両方について考えてみます。
クリニックの通いやすさを見直すと、両立しやすくなることも
クリニックや病院を選ぶときには、本来は「自分に合った治療をしてくれるか」「実績や治療の選択肢があるか」が大切です。とはいえ、最近は働きながらでも通いやすいように、夜間診療や予約システムを取り入れているクリニックも増えてきました。まずは治療の質を第一に考えながら、通いやすさも重視することで、両立しやすくなるかもしれません。

退職を考える前にできることを確認してみよう
在宅勤務やフレックスタイムをうまく使いながら、周囲に伝えずに仕事とうまく両立している人もいますが、実際にはそうできる人は限られているのが現実です。特に出社が必要な仕事や急な対応が多い職場では、やはり周りの理解や協力が必要になります。
まずは、勤務先に「不妊治療と仕事の両立を支援する制度」があるかどうか確認してみましょう。制度があっても意外と知られていないことがあります。もし利用できる制度があれば、ためらわずに活用を検討してみてください。
そういった制度がない場合は、上司に直接相談することも検討してみましょう。直属の上司に話しづらいときは、人事や総務など相談しやすい部署を探してみるのもひとつです。不妊治療はとても個人的なことですから、話すには勇気がいりますよね。体調不良など別の理由で伝える人もいますが、通院の頻度などから、いずれ不自然さを感じさせてしまうこともあります。そのときの気まずさや心の負担を思うと、正直に伝えるほうが結果的に気持ちが楽になる場合もあります。
それでも難しいときは、“辞める”選択も間違いじゃない
制度や環境が整っていればよいのですが、そうでない場合は両立が難しいこともあります。そのときは、仕事を辞めて治療に専念するという選択も考えられます。
退職するメリット
・通院の予定を自由に組める
・周りに気を使わずにすむ
・残業や急な予定変更に振り回されない
・「あの時、治療に専念していれば」と後悔しにくい
・通えるクリニックの選択肢が広がる場合がある
・以前の職場に戻れる再雇用制度があれば復帰しやすい
退職するデメリット
・経済的な不安が大きくなる
・自費診療が続けにくくなる可能性
・特別な資格や経験がないと今まで同水準で再就職が難しい場合がある
・地域によっては保育園の優先順位が下がる
退職しても大きなデメリットを感じない人もいるでしょう。その場合は、思い切って治療に専念するのもひとつです。ただし、辞めたからといって必ずしも妊娠できるわけではない、という現実も頭に入れておく必要があります。
ひとりで抱えこまないで。専門家に話してみる勇気を
不妊治療の悩みはとてもデリケートで、なかなか人に相談しづらいものです。そのため、一人で抱え込み、答えを出せないまま心身が疲れてしまう人も少なくありません。中にはうつ状態になってしまう方もいます。誰かに話すことで、新しい考え方や選択肢が見えてくるかもしれません。
現代のようなネット社会では、不妊治療に関する専門的なアドバイスをオンラインで提供する専門家も増えています。クリニックでの診療と並行して、このようなオンライン相談を上手に利用することも、精神的なサポートを得るための大切な手段となります。
不妊治療と仕事の両立は、正解がひとつではありません。大切なのは「自分にとって納得できる選択」をすること。無理をせず、自分のペースで両立を模索している人もたくさんいます。悩みを抱えたまま頑張り続けるのではなく、周囲や専門家にサポートを求めながら、自分に合った選択肢を見つけてくださいね。
参考文献
1)厚生労働省. 令和5年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査. 東京: 厚生労働省; 2023.
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001168037.pdf







