【vol.4】「流産を経験して、不妊治療を再開する勇気が出ません」流産後のメンタルとの向き合い方と不妊治療再開の進め方

妊活や不妊治療中は、「終わりが見えない不安」「焦り」「孤独感」など、様々な感情が押し寄せます。この連載では、妊活専門のカウンセラーや医師が、皆様の心にそっと寄り添い、不安やストレスと上手に付き合っていくための「心の処方箋」をお届けします。

【vol.4】「流産を経験して、不妊治療を再開する勇気が出ません」流産後のメンタルとの向き合い方と不妊治療再開の進め方

最終更新日:
2025-11-21
公開日:
2025-11-20
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34歳 女性
34歳、妊活を始めて3年が経ちました。 昨年、不妊治療でようやく妊娠できたのですが、残念ながら流産に終わってしまいました。 あのときの悲しさが忘れられず、治療はお休みしたままで、 今も気持ちが戻らないまま時間が過ぎてしまっています。 年齢のことを考えると、そろそろ再開したほうがいいのかもしれません。 でも、また同じ悲しみを経験するのではと 思うと、病院に行く勇気が出ないのです。 子どもがいなくてもいいと思うこともあれば、将来後悔するのではと不安になる日もあり、どうしていいのかわかりません。

長い不妊治療の末に授かった妊娠での流産は、とてもつらい経験だったと思います。その悲しさが残っていて、治療を再開するのが怖いのは自然な気持ちです。この記事では、流産後の心との向き合い方や、不妊治療再開の考え方についてお伝えします。

流産のつらさを一人で抱え込まないで

流産はめずらしいことではなく、妊娠した女性の約15%が経験するといわれています。1)「流産を経験しているのはあなただけじゃないから」と声をかけられることもあるでしょう。頭で理解できても感情が追いつかないのは自然なことです。無理に前向きになろうとする必要はありません。

また、「次頑張ればいいじゃない」と言われることもあります。このように言われることで、かえって「自分だけが苦しんでいる」と感じたり、自分の気持ちが軽く見られたような気がしたりして、さらに孤立感が深まる人も多いのです。

大切なのは、流産のつらさをひとりで抱え込まないこと。そのためにできることをいくつか紹介しましょう。

気持ちを認める

つらいときは「つらい」、悲しいときは「悲しい」と声に出しても構いません。感情を表に出して涙を流すことも、心の整理につながります。

誰かと共有する

本来はパートナーと気持ちを共有できるのが望ましいのですが、男性が悲しみをうまく 表現できないこともあり、かえって「自分だけが苦しい」と感じる女性も少なくありません。

そうしたときは、同じ経験をした人が集まる会に参加するのもひとつの方法です。クリニックや自治体が主催する場を選ぶとよいでしょう。

自分を責めない

流産を経験すると、生活習慣や仕事のせいではないかと自分を責めがちです。

しかし、流産の多くは胎児の染色体異常によるもので、必ずしも母体側に原因があるわけではありません。2)また、胎児の染色体異常も必ずしも卵子が原因とは限らず、最近では精子に原因があることもわかってきています2)。どうか自分を責めすぎないでください。

専門家のサポートを受ける

流産後から数か月経っても「気力がわかない」「涙が止まらない」「生きるのがつらい」といった状態が続くときは、心療内科などの受診も検討してください。不妊治療再開に不安がある場合は、不妊クリニックに相談するのもおすすめです。

不妊治療の再開は早めが安心。でも、不安なら専門家に相談しよう

妊娠に年齢の制限がなければ「心身が整うまでゆっくり」と言えますが、不妊治療では年齢が進むにつれて妊娠の可能性が低くなるため、心の準備が整うまで待つことが難しい 場合もあります。34歳という年齢であればすぐに焦る必要はないものの、少しずつ妊娠率が下がり始める頃です。子どもを望むなら、早めの再開が安心でしょう。

同じクリニックに通うのがつらければ、転院という選択肢も視野に入れてください。転院する場合は、以前の病院に保管されている受精卵について、別の病院への移送または 破棄のどちらかを決める必要がありますので、事前に相談しておきましょう。

治療を再開する過程で、不安になったり気持ちが揺らいだりすることは誰にでもあります。そうしたときは、心理カウンセラーや医師に気持ちを話してみてください。ひとりで抱え込まず、専門家のサポートを受けながら進めることが大切です。

なお、流産が2回続く確率は2~5%、3回続くのは1%程度とされ、繰り返す確率は高くありません1)。原因の多くは染色体異常ですが、複数回続く場合は他の要因が関わっている可能性もあります。

流産を繰り返してしまう場合は、流産した胎児を調べる「流産絨毛染色体検査」(流産した胎児の遺伝情報を調べる検査)や母体側の検査を受けることも検討しましょう。また、「反復する体外受精・胚移植の不成功」(複数回の体外受精や胚移植が不成功に終わっている状態)、「反復する流死産の既往年齢」(過去に2回以上の流産または死産を経験している、母体の年齢)、「女性が高年齢の不妊症(35歳が目安)」(高年齢による妊娠のしづらさ)の条件に合致すれば、胚移植前に「着床前検査(PGT-A)」(受精卵の遺伝情報を事前に検査して、染色体に異常がない受精卵を選別する検査)を行えることもあります。詳しくは通院中のクリニックに相談してください。

焦らなくていい。少しずつ前に進む準備をすすめよう

流産を経験した後に、不妊治療を再開する気持ちになれないのは自然なことです。焦る必要はありませんが、子どもを望むなら少しずつ前に進む準備も必要です。つらい気持ちを一人で抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談してみましょう。

参考文献

1)公益社団法人日本産婦人科学会 流産・切迫流産 ウェブサイト

https://www.jsog.or.jp/citizen/5707/

2)FQ2 男性不妊治療において精子DNA断片化指数(DFI)の測定検査をどのように考えるか In: 江藤正俊, 辻村晃, eds. 2024年版 男性不妊症診療ガイドライン. メディカルビュー社;2024:026-029 

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