【vol.4】「出産が怖くて前向きになれない」臨月の不安は“赤ちゃんを守ろうとする力”です

産前産後は、女性の生涯で最もホルモンバランスが変動する時期。心と体が不安定になりやすいこの時期を、どう乗り越えればいいのでしょうか?助産師が、ホルモン変化のメカニズムから、ママ自身やご家族ができる具体的なストレス対処法・セルフケアのコツまで、実践的にアドバイスします。

【vol.4】「出産が怖くて前向きになれない」臨月の不安は“赤ちゃんを守ろうとする力”です

最終更新日:
2025-11-21
公開日:
2025-11-18
女性のイラスト女性のイラスト女性のイラスト女性のイラスト女性のイラスト
臨月が近づくにつれて出産への不安が大きくなっています。 周りの友達から「自然分娩は本当に大変だった」という体験談を聞くたびに、自分も同じように耐えられるのかと怖くなります。 陣痛の痛みや出産の長さを想像すると、赤ちゃんに会える楽しみよりも不安が勝ってしまい、夜も落ち着かず心がざわついています。 「きっと大丈夫」と自分に言い聞かせても、怖さが消えず、出産を前向きに迎える気持ちになれません。

臨月の不安は“赤ちゃんを守ろうとする力”

いよいよ出産が近づき、気持ちが落ち着かず、不安が高まっているのですね。未知の体験に対して楽しみよりも怖さが勝つのは、とても自然なことです。「案ずるより産むが易し」という言葉があるように、昔から多くの女性たちも出産前にあれこれと心配してきたのでしょう。

不安や恐怖は、できれば感じたくない感情かもしれません。でも実は、それぞれ大切な役割を持っています。不安は「未来への備えをしましょう」というサインで、恐怖は「危険から身を守りましょう」というアラームです。つまり、出産を前に不安や怖さを感じることは、命を守るための自然な働きであり、決して悪いことではありません。

また、人間の脳は、幸せなことよりも危険や大変だったことに強く注意を向けるようにできています。そのため、出産の体験談も「幸せだった」という話より「大変だった」という話の方が耳に入りやすいのです。

特に臨月に入ると「自分と赤ちゃんの命を守りたい」という本能が強く働くため、こうしたネガティブな情報をより敏感に感じ取ってしまうのかもしれません。もし不安が強くなるときは、思い切ってSNSや体験談から少し距離を置いてみるのもひとつの方法です。

心配な気持ちを“行動”に変えてみる

前述のとおり、不安は「未来への備えをしましょう」というサインでもあります。頭の中であれこれ想像するよりも、下記のような具体的な行動に変えることで不安は小さくなります。

  • 一般的な出産の流れを知る
  • 出産予定の産院や分娩室を見学する
  • バースプラン(出産時の希望や過ごし方の計画)を立てて助産師と話し合う
  • マタニティヨガやイメージワーク(出産場面を前向きにイメージする方法)で体に意識を向ける
  • 楽に過ごせる姿勢をいろいろ試す
  • 自分がリラックスできる方法を増やしておく

こうした備えは怖い出産を避けるためではなく、少しでも安心して出産を迎えるために役立ちます。未来に備える行動を一つずつ積み重ねることで、不安が少しずつ和らぐでしょう。

ちなみに、多くの方が恐れる陣痛の痛みも、実は体を守る仕組みのひとつです。ケガの痛みのように体が損なわれているのではなく、赤ちゃんを産むために子宮が働いているサインなのです。

さらに、リラックスしていると体内からエンドルフィンというホルモンが分泌され、麻酔に似た作用で痛みを和らげてくれます。体にはあなた自身を守る力が備わっていることも、どうか忘れないでくださいね。

すべての気持ちを大切にして

ここまでの妊娠期間、あなたの体と心はたくさんの変化を受け止め、赤ちゃんを育んできました。あなたはすでに尊く大きなことを成し遂げているのです。出産に向けて準備できることはやりきったと思えたら、あとは自分の体と子宮、そしてお腹の赤ちゃんに「ありがとう」「大丈夫だよ」と声をかけてみてください。

出産は、あなたと赤ちゃん、そして支えてくれるパートナーや家族、医療従事者や助産師が一緒に迎えるものです。あなたは決して一人ではありません。

「幸せだなぁ」「嬉しいな」というポジティブな気持ちだけでなく、「怖いな」「不安だな」といったネガティブな気持ちもたくさん出てきて大丈夫です。「大丈夫かな」「やっぱりだめかもしれない」という不安も、自然な感情です。喜びも不安も、全部を家族や助産師らに伝えてみてください。みんなが一緒に、あなたの出産をサポートしていますからね。

これまで積み重ねてきた時間と準備、そして周囲の支えを信じて、どうぞ安心して出産の日を迎えてください。ご安産をお祈りしています。

参考書籍

・高井祐子『ラクに生きるための「心の地図」セルフケアメソッド100』ナツメ社、2025

・玉井仁『7つの感情 知るだけでラクになる』モラロジー道徳教育財団、2023

・ベッセル・ヴァン・デア・コーク著、柴田裕之訳『身体はトラウマを記録する』紀伊国屋書店、2016

・青砥瑞人『HAPPY STRESS ストレスがあなたの脳を進化させる』SBCreative、2021

・ベルナデット・ド・ガスケ著、シャラン山内由紀、モッタン丹羽康子訳『動画でわかる妊娠・出産でもっと輝く女性のからだのケアガイド』メディカ出版、2023

・アンドレア・ロバートソン著、大葉ナナコ訳『産む力の咲かせ方』メディカ出版、2004

・ベルナデット・ド・ガスケ著、シャラン山内由紀訳『最適な姿勢・呼吸&サポートがイラストでわかる!出産準備パーソナルレッスン』メディカ出版、2020

ポップアップ/別タブ

同じタブ

Cuepodのオンラインカウンセリングを試してみませんか?

関連記事

産前・産後の準備
【Vol.7】「妊婦健診で『体重増えすぎ』と言われるのが怖い」体重チェックのストレスとどう向き合えばいい?
産前・産後の準備
【Vol.6】「出産後、性生活再開のタイミングに悩んでいます」産後のパートナーシップと性生活、どう向き合う?
産前・産後の準備
妊娠中に寿司を食べて後悔する3つの理由|食べられるネタも解説
産前・産後の準備
【Vol.5】「産後3か月。体重も体型も全然戻りません。ダイエットしてもいいですか?」栄養バランスと体を“整える”ことを意識しましょう
産前・産後の準備
マタニティマークはいつからつける?迷う理由や職場での使い方も解説
同じカテゴリーの記事一覧

同じシリーズの連載記事

【Vol.7】「妊婦健診で『体重増えすぎ』と言われるのが怖い」体重チェックのストレスとどう向き合えばいい?
【Vol.6】「出産後、性生活再開のタイミングに悩んでいます」産後のパートナーシップと性生活、どう向き合う?
【Vol.5】「産後3か月。体重も体型も全然戻りません。ダイエットしてもいいですか?」栄養バランスと体を“整える”ことを意識しましょう
【vol.4】「出産が怖くて前向きになれない」臨月の不安は“赤ちゃんを守ろうとする力”です
【vol.3】「つわりと仕事の板挟みがつらい」妊娠中に大切にしたいのは頑張ることではなく“自分への思いやり”です
【vol.2】「『また流産したらどうしよう…』と怖くなります」その不安とどう付き合えばいい?
【vol.1】「母乳が出ていても完ミ(完全ミルク育児)にしたい……」その気持ちは甘えではありません