【Vol.5】「産後3か月。体重も体型も全然戻りません。ダイエットしてもいいですか?」栄養バランスと体を“整える”ことを意識しましょう

産前産後は、女性の生涯で最もホルモンバランスが変動する時期。心と体が不安定になりやすいこの時期を、どう乗り越えればいいのでしょうか?助産師が、ホルモン変化のメカニズムから、ママ自身やご家族ができる具体的なストレス対処法・セルフケアのコツまで、実践的にアドバイスします。

【Vol.5】「産後3か月。体重も体型も全然戻りません。ダイエットしてもいいですか?」栄養バランスと体を“整える”ことを意識しましょう

最終更新日:
2025-11-25
公開日:
2025-11-25
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出産から3か月経ちましたが、体重も体型も戻りません。 授乳中でも食事制限や運動をしてダイエットしていいのでしょうか。 赤ちゃんへの影響も心配なので、どうしたらいいかわかりません。

まだ3か月。焦らなくて大丈夫です

ご出産おめでとうございます。そして、毎日お疲れさまです。

出産後の体重や体型の変化にとまどう気持ちは、とても自然なことです。「早く元に戻したい」と思うのも当然です。

ただし、出産後、体が元の状態に戻るには時間が必要です。妊娠中、あなたの体は10か月かけて赤ちゃんを育むために大きく変わりましたから、その体が元に戻るのにも同じくらいの時間が必要だと考えてください。

出産直後、体重は平均5.8kg減少し、その後も減り続けますが、妊娠前の体重に戻るには多くの人が3~6か月かかるといわれます。ただ、個人差もありますので、焦らずゆっくりと時間をかけて体を整えていく方が、心身ともに安心です。

体重や体型が戻らない自分を責める必要はありません。出産からまだ3か月ですから、これから少しずつ元に戻していきましょう。 

授乳中の食事は“栄養バランスを整える”ことが大切

ただし、覚えておいてほしいのは“授乳中に食事を制限してはいけない”ということです。

母乳を作ると、あなたの体から栄養が失われます。母乳育児中の女性は、1日あたりおよそ750mlもの母乳を作っています。母乳の原料はお母さんの血液。つまり、毎日、あなたの体から750mlの栄養が赤ちゃんに与えられているということです。

そのような状況の中で、さらに食事を制限してしまうと、どうなるでしょうか。あなたの体に必要な栄養が不足し、結果として体調を崩したり、疲れやすくなったりする恐れがあるのです。

授乳中は、通常よりも1日あたり約350kcal多くエネルギーをとる必要があるといわれています。ですから、今は「食べる量を減らす」よりも「食べ方の質を整える」ことを意識してみましょう。

特に、体力回復と母乳生成に欠かせない「タンパク質」、貧血を予防する「鉄分」、授乳に伴うあなたの骨量低下を防ぐ「カルシウム」、母乳生成に直結する「水分」をしっかり意識してとることが大切です。

日常生活の中でどのように栄養バランスを整えたらいいのか、一例を紹介しますね。

(例)

・おにぎりに焼き鮭を入れて握る(タンパク質をプラスできる)

・冷凍のほうれん草を常備して、お味噌汁などに加える(鉄分をプラスできる)

・朝ご飯にヨーグルトを追加する(カルシウムをプラスできる)

・のどの渇きを感じる前に、こまめに白湯を飲む(水分をプラスできる)

このように「今日から何かを足す」という意識で、日常の中でできることを少しずつ取り入れるだけで、自然と食事のバランスが整います。できることから取り組んでみましょう。

また、体重を落としたいという気持ちから、つい「今より食べる量を減らそう」と考えてしまうかもしれません。しかし、その前に“食べ方の質”を見直してみてください。

授乳や育児で忙しくて「立ったまま、菓子パンをかじるだけ」や「つい、食べそびれてしまった」ということもあるかもしれません。そのようなときは、まずはお湯を注ぐだけで造れる温かい汁物をとってみてはいかがでしょうか。簡単に準備できる汁物なら、毎日続けやすいはずです。もしできそうなら、その汁物に野菜を足してみる、温かいごはんをおにぎりにしてこまめに食べることもおすすめです。

もし「何を足すか」ではなく「何を減らすか」に目を向けたいなら、お菓子や清涼飲料水など、栄養価が低くカロリーだけ高い食べ物を減らすことを考えてみましょう。これらを控えるだけでも、体の変化を感じられる場合があります。

運動は無理なくすすめて、体を“整える”ことを意識

妊娠前から定期的に運動をしていた方であれば、出産後の体調を見ながら少しずつ再開してみてください。心配であれば、運動を再開してもよいかどうか医師に相談してみるといいかもしれません。

一方、運動があまり得意ではない方や、出産後に運動する習慣がなかった方は、まずは姿勢を意識することからスタートしましょう。背筋を伸ばして家事をしたり、赤ちゃんを抱っこしたりするだけでも、体幹の筋力が少しずつ戻ります。

また、地域の産院や助産院、子育て支援センターなどで、産後ヨガ、親子エクササイズ、バランスボールクラスなどを開催していることもあります。体に負担が少なく、同時に気分転換や同じ立場の方とのつながりも得られるため、おすすめです。

ただし、避けるべき運動もあります。腹筋運動のように上体を勢いよく起こす動きやガードルでおなかをきつく締めつける方法は体に大きな負担をかけます。骨盤や内臓に負担をかけ、内臓下垂を招くこともあります。

出産後の体は、まずは骨盤のゆがみを整えることに意識を向けましょう。無理のない範囲でゆっくりと体を動かしていくことが大切です。

今のあなたの体は、頑張っている証です

妊娠中から出産、そして現在の授乳期まで、あなたの体は常に赤ちゃんを守るために働き続けてきました。その体の変化のすべてが、その頑張りの証なのです。

体重や見た目の変化だけに目を向けるのではなく、「よくここまで頑張ってくれたね」という感謝の気持ちを持って、自分の体をいたわってあげてください。

赤ちゃんと過ごす日々の中で、小さな喜びを感じながら体を整えていきましょう。その毎日の積み重ねが、やがて健やかさと美しさにつながっていくのです。

参考書籍

・宮崎和子監修『看護観察のキーポイントシリーズ(改訂版)母性Ⅱ』中央法規、2006

・戸田千『医師のための乳児栄養Q&A』南山堂、2024

・水野克己『改訂第3版 よくわかる母乳育児』へるす出版、2023

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